ファンレター
「うぉ!すっげぇかわいい!」
打ち合わせで福田くんの家に行くついでに、持ってきたファンレター。先に内容を確かめ済なので、彼が思わず叫びたくなる位、とびきりかわいい女の子が映ったプリクラが、便せんに貼られている手紙が混じっていたのも僕は知っている。
「ちょっと、この子住所何処だ?……『横浜』!十分会えるじゃん!」
「福田くん!」
「…分かってますよ。冗談っスよ。第一、そんな暇無いし…」
そうだろう。そうでないと困る。
「暇が無いからこんな、手近なアフロで手ぇ、うったんですから」
「…悪かったな。『こんな』んで…」
そういえば、プリクラの美少女はサラサラのストレートヘアだったっけか。
「…いまどきのプリクラは凄いよ、福田くん。ほとんど詐欺だ」
「『いまどき』…おっさん臭い台詞…」
…仕方ないだろう?君に比べればより、「おっさん」に近いんだから。君だってあっという間だ。
「何?妬いてる訳?雄二郎さん」
福田くんは心底意地が悪そうな顔で笑った。
「違う…君のファンにこんな、若い女の子がいたんだなって。それが意外なだけだ」
「いいものは、男女の別なく支持されるって訳っスよ」
「……」
打ち合わせは済ませたし、いつまでも無駄話を続ける訳にもいかない。
「じゃ、福田くん、今日はこれで」
「もう帰るんスか?」
「…僕がいたら君、仕事しないじゃないか。今日はまだ、これから新妻くんのとこにも行かないといけないし」
「新妻くんのとこ?」
…今の君のがよっぽど、「妬いてる」って顔してるんだけど…。指摘しても認めないだろうから、口にせずに僕は、帰り支度を始めた。
「じゃあ、おやすみ…って、まだ寝れないか。頑張って」
そう言って、玄関へ向かう為に部屋を出ようとしたら、
「雄二郎さん」
肩を掴まれていきなり、キスされた。
「…浮気すんなよ」