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携帯電話


「福田先生」
まだ連載の決まらない俺は出席出来なかった(悔しぃ~!)、そして新妻くんから直接、真城くんから携帯で聞いた、中井さんを奈落に突き落とすような事件が起きた新年会。それから数日後のある日、今の今まで、ギャース×2と言いながら原稿を描いてた新妻くんが、ひと区切りついたかしてヘッドフォンを外してふと、アシをしてる俺に話しかけてきた。
「何?」
中井さんは、やめときゃいいのに今日も蒼樹嬢を説得しに行く為に上がった後…なので今は、二人っきりだ。
「新年会、雄二郎さん来てました」
今頃、急に思い出したかのようにそんな事を言う。
「…そりゃ、そうだろう」
雄二郎ごときが、取締役まで出席する新年会を欠席していい訳がないんだから。
「スーツでした。かっこよかったです」
「そう…」
あのアフロに、何を着せても変わり映えはしねーと俺は思うんだが…。
「福田先生にも、見せたかったです。…きっと、惚れ直すです」


俺は一瞬、耳を疑った。俺と雄二郎のことは、新妻くんには…ってか、彼に限らず誰にも、絶対ばれてねぇって自信があったのに。
(…もしかして、かまをかけられてるのか?)
それとも単に、言葉を選び間違えて?返答に窮して俺は、黙り込んでしまった。


沈黙を、俺の携帯の着信音が破った。…雄二郎!普段なら、このまま机で出るんだけど、今はちょっと、会話を聞かれたくない気分。
「…ちょっと、電話…」
俺は新妻くんにそう断って部屋を出ようとした。
「ごゆっくり~」
「……」


ドアの外で電話に出ると、
「や、福田くん。今日予定通り上がりそう?僕は何とか大丈夫っぽいんだけど、待ち合わせ、何処にしよう?」
ウキウキした、担当編集者の声が聞こえてきた。
「雄二郎さん!あんた、何かやらかしたか?」
「…え、何?何のこと?」
「『ばれてるかも?』なんだよ!新妻くんに俺達のことが…」
「……」
血の気のひいた雄二郎の顔が、目に浮かぶようだ。
「そんな…僕は、気をつけてるし…。だいたい、新妻くんと一緒にいる時間は君の方が長いじゃないか。だから、ばれるとしたら君じゃないのか?」
言うに事欠いて、雄二郎の奴!
「馬鹿野郎!だいたいあんたとこうなったのも、あんたが無理矢理…」
「ひ…人聞きの悪い!」
「はっくしょん!」
一月の戸外だ。寒さで思わず、くしゃみが出た。
「…福田くん?風邪?大丈夫かい?」
心配してくれてるらしい声に、俺はほっこりした…今の今まで、お互いキツい口調で言い合ってたのが嘘みたいに。
「…大丈夫。ちょっと、寒かっただけだ」
「そう?それならいいけど…。風邪引いても、新妻くんにはうつさないでくれよ」


俺は一瞬絶句した後、
「……最低だな!あんた。恋人より連載作家のが大事だって言うのかよ!」
「…っ!いや、その…君の事だって勿論、大事だよ。でも、新妻くんは週刊で連載してるんだ。それも常に、アンケートで上位をキー」
俺は、話の途中で携帯を切って、部屋の中に戻った。そしてそれから何回、雄二郎からかかってこようと出ず、そのうち電源自体を切った。そしたらその後、新妻くんのが鳴り出した…多分雄二郎からだろうけど、またヘッドフォンをつけて作画に没頭し始めた彼が気付く訳ねーし。だいいち、彼が気付いて出て、「ごめん新妻くん!福田くん出してくれる?」なんて言ってみろ。それこそ何事かと思われる…疑惑に、とどめをさすようなもんじゃねーのか?(まぁ、漫画馬鹿の新妻くんなら、あまり深くは考えねーのかも…俺の携帯がたまたま電池切れで…とか、思うのかもしんねーけど)


俺は、新妻くんの携帯を手にとった。ついこないだ、鳴っているのに一向に彼が気付かないので代理で出て、後でかえって「ありがとうございました」と礼を言われた位だ。差し支えないだろうと思って開くと、案の定かけてきてるのは雄二郎だった。
(馬鹿野郎…)
そうは思うのだけれど…なんとか俺と連絡をとってフォローしなきゃと、あせって必死で電話をかけ続けてる雄二郎の姿が想像出来て、俺はフッと笑った。
(かけてこなきゃ…それこそ大馬鹿か)


失言自体は仕方ない。俺もよくやらかすし。その後の相手の気持ちを忖度出来ねーような輩だったら…もしくは、ばれる云々のリスクを恐れて、恋人の機嫌を損ねたまま放置するような奴だったら…。
(今頃とっくに別れてる。…ってか、そもそも付き合わねーし)
雄二郎の頭で、リスクとかそういうことまで考えてるかは謎だけど。


俺は通話キーを押した。
「あ!ごめん新妻くん!福田くん出してくれる?」

2009-11-21 : 雄×福SS :
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プロフィール

曜

Author:曜
バクマン。の雄二郎×福田がメインのSSブログです。福田×蒼樹も少々。ド短期運営になるかもしれませんが、よろしければお付き合いの程を。

なお、SSは話ごとに時期や設定が異なります。両思いだったり片思いだったり。キャラの性格や口調等、かなり独自解釈してたりで捏造率が高いかと思いますが、あしからずご了承願います。


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