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「女子高生」の続き。


その日、福田くんちに原稿をとりに行くと、
「やだ~!」
あの、いつぞやの女子高生の声が聞こえてきた…。


(またかよ…ってか、サインなんぞ、一回でいいはずだろ?)
なんとなくげんなりしながら奥に進むと、福田くんと安岡くんが向かい合って作画作業をしてるその傍らで、床に折りたたみ式の小さなテーブルを置き、そこでトーンを貼ってるらしき件のあの子がいた。
「あ、担当さん。お疲れ様です~」
挨拶してきた女子高生を無視して僕は、部屋の主に話しかける。
「…福田くん、あの、これは…?」
「ああ。安岡がどうしてもしんどいって言うんで、臨時のアシに入って貰ったんスよ」
アシなんか出来るのかよ?と僕は思ったけれど、床に置かれた、トーン処理済みの原稿を拾い上げると、削って光の当たり具合まで表現してあって、なかなか上手い…これをこの子が?と思って視線を彼女に寄越すと、
「あ、あたし同人やってるんです!」
ああ…それで。


「本当、アコちゃんはベタもトーンも上手いし…大助かりっス」
安岡くんが、休まず手を動かしながらしみじみと言う。
「これで、バイト代払わずに済めば、言うこと無しなんだがな」
福田くんが冗談めかして笑うと、
「…彼女にしてくれたら、バイト代無しでもいいんだけど…」
おいおい…「彼氏持ち」じゃなかったのかよ?


その発言に、安岡くんが反応する。
「あれ、アコちゃん彼氏募集中?」
あきらかに、お目当てはお前じゃないだろう…?
「うん。こないだ…別れたの」
そう言って、彼女は福田くんの方へ視線を投げてる…あぁ、なんだこの、少女漫画みたいな展開は!いたたまれなくて僕は、そもそものここへ来た目的を口にする。
「福田くん!打ち合わせ!」
「あぁ、そうっスね」
「…今日は、外でしよう。外で。コーヒー位はおごるから、さ」
小声で囁きかける。
「いいっスけど?」
「いってらっしゃ~い!」
「…いってらっしゃい」
二人っきりになれて嬉しそうな安岡くんと、福田くんがいなくなるってんで寂しそうな「アコちゃん」…対照的な二人に見送られて、部屋を出た。


「何?アレ。『彼女にしてくれたら…』って、アピールばりばりじゃん!」
近くのファミレスに向かう道すがら、話しかける。
「…今回きりっスよ。どうしても、手が足りないから…」
あ、さすがに福田くんもそれは…モーションかけられてるのは、分かってるのか。
「僕がアシスタント紹介するっていったじゃないか」
「本職のアシは、ギャラ高いっスよ。それにあんまし、絵の上手い奴に入られると『浮く』し」
「でも…変に期待もたせちゃ、悪いよ?あの子に」
…あれ?なんか僕、大人の分別めいたこと、口にしてる?
「…だから、今回きりって言ってるじゃないスか!」
福田くんが口調を荒げたので、
「…ごめん」
思わず、謝ってしまった。


席について注文を済ませると、福田くんが不意に話し始めた。
「今は…一番、大事な時だから。アコには悪いけど俺、女にかまけてる場合じゃないし」
「そう…だよな。うん。分かってるなら…大丈夫だ」
いや、でもそれは…僕の気持ちの入り込む余地も無いってことになるんじゃ…?
「雄二郎さん」
「…はい」
真剣な眼差しに気おされて、思わず丁寧語になった。
「KIYOSHI、当てよーぜ」
「…うん」


打ち合わせをしながら、考えた。少なくとも僕は、彼の大事な×2作品の、編集という立場での「共同制作者」だ。あの子よりはよっぽど、恵まれた立場と言えるだろう。…多分。


一抹の寂しさを覚えつつも、それを押し殺して僕は、「編集者」に徹した。

2009-11-24 : 雄×福SS :
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プロフィール

曜

Author:曜
バクマン。の雄二郎×福田がメインのSSブログです。福田×蒼樹も少々。ド短期運営になるかもしれませんが、よろしければお付き合いの程を。

なお、SSは話ごとに時期や設定が異なります。両思いだったり片思いだったり。キャラの性格や口調等、かなり独自解釈してたりで捏造率が高いかと思いますが、あしからずご了承願います。


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