サラリーマン
(ん…あ…)
ピピッという携帯のアラームで目が覚めた…僕は、隣りで寝てる人間を起こしちゃいけないと思って慌ててそれを停めると、寝床から起き上がった。
ここは、僕のアパートよりは神保町まで時間がかかるから、早く出ないといけない。とりあえずは昨夜脱ぎ散らかした服を着て、トイレに行き、洗面台で顔を洗い…。
(…飯は、出勤してからだな)
そう思いながら最初の寝室を覗いてみると…相変わらず、福田くんは眠ったままだった。さっきこそ、起こすまいと気を遣ったけれど、いざ自分が出勤する段になってもまだ、目覚めないとなると…何だか、腹立たしい。
「…福田くん」
声をかけてみたけれど、反応が無い。
「今日は、安岡くんが来る日だろ?確かまだ、ペン入れがあんまり進んでないって言ってなかったっけ?」
昨夜そう言って渋る彼を、拝み倒して寝床に連れていったのは僕だけれども。
「…起きてるよ…」
とてもじゃないけど、覚醒し切ったとは言えないような返事が聞こえてきた。
「…福田くん」
「……」
「『いってらっしゃい』のキスは?」
「…っ!ふざけんな!馬鹿!」
確実に目が覚めたらしき声が聞けたので、僕は安心して出かけることにした。