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「服部」


終わった後の、寝床の中。僕は傍らに横たわる福田くんの、自分のそれとは違う、真っ直ぐな髪に戯れで、指を通して梳いていた。その時不意に、
「…同じ『服部』でも、えらい違いだ」
そう、呟かれて…。
「え」


別に、その手合いの台詞自体は聞き慣れている。編集部内で、僕の事は軽く見がちな奴も、もう一人の服部…服部哲に対しては、それなりに一目置いてるっぽい…なんてことはしょっちゅうだからだ。そこら辺、二歳の年の差以上のインターバルを、同姓のあいつに感じてる訳で…。


しかし今回は、編集部員が…ではなく、恋人が閨の中で…というシチュエーションで、だ。
「…それ、どういう意味?」
「服部哲と、真城くん達のことだよ」
ああ、連載会議の「作戦勝ち」のことか…って、結局編集者としての僕に対する駄目だしかよ!一瞬、あり得ない「変な心配」をしてしまった…閨の相手としての比較をされたのかと思った僕は、
「福田くん…。今は仕事の話題駄目だろ?」
そう言って責めた。そもそも、そういう約束を言い出したのは彼の方だったはずだ。


「…いいじゃん。細かいことは…」
「連載会議に関しては…電話で謝っただろ?」
こうして、ベッドを共にするのを許してくれた位だから、一応はもう、済んだこととして水に流してくれたと思ってたんだけど。
「…次の連載会議、絶対通すから…。雄二郎さんもちゃんと、『KIYOSHI』のこと考えといてくれよ?」
いつも我を通そうとする福田くんにしては珍しい…彼も少しは、編集の意見なりを容れることの大事さに、気付き始めたってことなんだろうか?もしくは、新妻くんにだけかまけるな…という釘をさしてるつもりなのか?
「…分かった」


それで一応、満足したのか。福田くんはにんまりと笑った。
「…編集者としての腕はともかく…」
おいおい。失敬だな。
「やっぱり、同じ『服部』ならあんたの方がいい。俺…面食いだから」
「………」
僕の顔に、自分の綺麗なそれを寄せてくる福田くんを見つめながら、
(それを言うなら…僕も同類だ)
そう思って、僕は目を閉じた。

2009-12-02 : 雄×福SS :
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プロフィール

曜

Author:曜
バクマン。の雄二郎×福田がメインのSSブログです。福田×蒼樹も少々。ド短期運営になるかもしれませんが、よろしければお付き合いの程を。

なお、SSは話ごとに時期や設定が異なります。両思いだったり片思いだったり。キャラの性格や口調等、かなり独自解釈してたりで捏造率が高いかと思いますが、あしからずご了承願います。


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