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Fever



(やばい…)
酷い風邪をひいて寝込んで、いざ薬を飲もうとしたら、「まだある」と思ってたのがとっくに底をついてたことに気付いて…。今更買いに出かける元気ももう、無い。さすがに死にはしないだろうけど……どうだろう?こういう時、一人暮らしは心細い。広島にいた頃なら、ここまで酷ければお袋なりが付き添っていてくれただろうに。
(…上京してきたのは、正しかったんだろうか?)
なかなか、連載会議も通らないし…って、俺らしくもない。こりゃぁ……相当弱ってる?
(責任とれよ…馬鹿)
俺は、枕元の携帯に手を伸ばして、俺に上京を決意させた担当編集者に電話した。




「福田くん!大丈夫?」
大丈夫な訳あるか、馬鹿。大丈夫じゃないから、あんたに電話したんだろうが。…そう、心の中で悪態をついたけれど、それを口から発するのも億劫で…。
「…雄二郎さん…薬…」
「ああ。…ほら」
寝床で半身を起こし、手渡された薬をペットボトルの水で飲み込み、また横になる。
「うわ~…なんか…」
「?」
「…弱ってる福田くんって…新鮮だなぁ」
…うるさい。そう思って俺は目を閉じたけれど、額に手を乗せられて、
「…っ!」
思わず、どきりとしてしまった。
「…熱、あるな」
「…雄二郎さん」
「何?」
「…うつったら悪いから…帰れよ、もう。…ありがと」
そう言ったのだけれど、雄二郎は帰ろうともせずまじまじと俺の顔を見つめ、
「…やっぱり、新鮮だ…」
感動でもしたみたいにまた、さっきの単語をしみじみと呟いた。


「…俺、そんなに…強情か?普段」
思わず問うと、雄二郎の苦笑した顔がそれを肯定した。
「でも…あれ位元気で、自分の表現にこだわってる福田くんが…好きだよ」
そう言ってから、雄二郎はハッとした顔になって、
「いや、その…変な意味ではなく…。漫画家として、表現者として…だよ?」
最近、俺達の間の微妙な…普通、同性同士の作家と編集者の間では流れないだろ?って雰囲気。それを思い出したらしく、あわてて雄二郎はそう、念押ししたけれど…。
「…そりゃー、残念」
「え?」
「漫画家としての俺しか、好かれてないんだなって」
熱に浮かされてるせいなのか。俺は思わず「勝負球」を放ってしまった。


「…福田くん」
何を言われても、さっきの発言は風邪の、熱のせいにしてしまおうと決めて俺は、頭から布団をかぶって顔を隠そうとしたけれど…。
「そんな…ことはない。漫画云々を抜きにしても、僕は…君が…」
鼻から上だけだして雄二郎を見ると…もう風邪がうつったのか?って言いたくなる位、顔が真っ赤だった。


俺がそっと、布団から手を差し出すと…。雄二郎はそれを、力強く握り返してくれた。


2009-12-09 : 雄×福SS :
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プロフィール

曜

Author:曜
バクマン。の雄二郎×福田がメインのSSブログです。福田×蒼樹も少々。ド短期運営になるかもしれませんが、よろしければお付き合いの程を。

なお、SSは話ごとに時期や設定が異なります。両思いだったり片思いだったり。キャラの性格や口調等、かなり独自解釈してたりで捏造率が高いかと思いますが、あしからずご了承願います。


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