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Knight

「embarrassed」の続き。


映画館の窓口で、前売り券を座席指定券に引き換えるって時。
「あ…通路に面してる席と、その隣り…でお願いします」
僕はそう、指定した。


入場開始を告げるアナウンスが流れ、係員に指定券を2枚もぎらせていざ、シアターの中に入ると僕は、先に座席に座り、その隣りの通路に面した席に座るよう、福田くんに促した。
「…俺が、通路側な訳?」
「そう」
「…雄二郎さんのが、画面中央に近いじゃん」
「細かいことにこだわるなぁ」
僕はことさら呆れたふうに呟いて、
「今日は僕の奢りなんだし…。年長者の言うことは聞くもんだよ」
本当は、瓶子さんにタダで貰った券なんだけど、そのことは黙っておいた。
「大体、そっちの方がトイレとか行き易くていいだろ?」
「…おっさんと一緒にすんな。そんなに近くねーよ」


結局、ぶつぶつ言いながらも福田くんは通路側の席に座った。そしてしばらくして暗くなり、予告が始まると、
「雄二郎さん」
僕の膝上のポップコーンに手を突っ込みつつ、小声で話しかけてきた。
「何?」
「…俺、女じゃねーんだから…変な気、遣わなくていいんだぜ?」
「…っ」
僕の…「恋人を、隣り合わせたよその男の接触からカヴァーしたい」という気持ちは、バレバレだったらしい。結局、僕の反対側の隣りの席は売れ残ったかして空席…福田くんを通路側に座らせた配慮は、無駄になった訳だけど。
「女の子でなくても」
僕も小声で、囁き返す。
「…『大事な恋人』には、違いないだろ?・・・嫌なんだよ、僕以外の誰かが、君に触れるのが」


「…潔癖」
くすくすと、笑う気配がする。僕は照れ臭いし、笑われてちょっと腹立たしいやらで、あえて隣りに視線を向けず、くだらなそうな予告をまっすぐ、眺めていた。すると…
「…っ!」
頬に、キスされた感触。びっくりして隣りを見遣ると、
「…安心しろ。誰にも触らせねーから」

2009-12-25 : 雄×福SS :
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プロフィール

曜

Author:曜
バクマン。の雄二郎×福田がメインのSSブログです。福田×蒼樹も少々。ド短期運営になるかもしれませんが、よろしければお付き合いの程を。

なお、SSは話ごとに時期や設定が異なります。両思いだったり片思いだったり。キャラの性格や口調等、かなり独自解釈してたりで捏造率が高いかと思いますが、あしからずご了承願います。


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