夏の後朝
傍らの人間が起き出す気配で目が覚めた。
「…雄二郎さん」
声をかけると、
「あ、起こした?ごめん」
そう言いながら雄二郎はダサい柄のトランクスを穿き、
「でも…君もそんなに寝てらんないよね?」
…うるせー。ゆうべあんたに散々ヤられて疲れたんだ。少し寝過ごす位大目に見ろよ。
返事もせずに俺は再び目を閉じたけど、しばらくしても雄二郎が寝室から出て行く気配がしない。妙に思って目を開けたら、服を着終わった奴がじっと、こっちを見つめていた。
「何?『行かないで』とか、言って欲しい訳?」
俺は冗談で言ったんだけど、
「…うん…いや…『行きたくない』だな。なんかまた…したくなってきた」
「…っ!」
思わず、顔が熱くなる。
「君が……ゆうべのまんまの格好だから…」
「何だよ?俺のせいかよ?」
俺は、申し訳程度に腰の辺りだけを僅かに覆っていた、かけ布団代わりのタオルケットを掴んで首から下をまんべんなく隠した。それを見て、ハァと雄二郎はため息をつき、
「じゃ、行ってきます…」
そう力無く宣言し、寝室を出て行った。
「………」
「する」時間が無かったのは、サラリーマンである雄二郎が悪い訳であって、俺じゃあない。そこまで考えてからふと、
(…何だよ?時間さえあったら…「してやってもよかった」って思ってんのかよ?俺)
色惚けした頭を覚ます為、シャワーを浴びるべく俺は寝床から離れた。