口軽
「雄二郎さん。あんた本当、口軽いな」
「へ?」
「新妻くんの発言とか、ラッコのアニメ化のオファーの事とか」
「ああ、昼間の事か」
今更持ち出されても…僕はすっかり、忘れていた。今はもう夜で、しかもベッドの中…だよ?
「心配しなくても大丈夫。いくら口が軽くても…君の乳首が意外にかわいいピンク色だとか、そういうのは誰にも言わないから」
「…っ!ふざけんな!ったりめーだろ!」
「大体、君だってトイレのドアを開けっぱなしにしてたじゃないか。僕の口が軽いってんなら、君の貞操観念はどうなんだよ?」
「…何の話だ?」
ほら、自分の事は何も分かっていない。
「僕だけならともかく、安岡くんだってあの場にはいたんだよ!…分かるだろ?僕の言いたい事」
恋人である僕はともかく…他の人間には、見せて欲しくないって。
「…安岡はこっちに背中向けてたから、見えてねーよ」
「そりゃ、そうだけども…」
何だか不毛な言い合いが続きそうなので、ここら辺で打ち切る事にした。
「まぁ、いいや。…おやすみ」
「…本当に、俺の余計な事、誰かに喋ったりしねーだろーな?雄二郎さん」
「疑り深いなぁ」
そりゃ…ピンクの乳首以外にも、じらしたら怒って「おねだり」する様がかわいいとか、僕のを咥えてる時の苦しそうな声がかわいいとか、安普請だからって、感じてるくせに必死で声出さないように堪えてる顔がかわいいとか、出来得るなら誰かに自慢したい事はいくつもあるけど…。
「大丈夫だって」
さすがに、なぁ。
「……まぁ、しゃーねーな。あんたにひっかかったのが俺の…」
何?「運の尽き」?その先気になるんですけど?
「…福田くん?」
問いかけても彼は答えず…そのうち、寝息をたて始めた。