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アシスタント


「アシスタント増やして下さいよ。雄二郎さん」
原稿を受け取りに福田くんちにやってきた僕に、安岡くんが開口一番、訴えた。福田くんがよほど疲労困憊したかして、受け渡しを任せて寝室に引き取った後…増員に反対の「先生」がいないので、ここぞとばかり…という訳だ。
「きついッス。さすがに」
そりゃあ、そうだ。彼のようなプロ志望のアシではない、最低限のベタやトーン貼りしか出来ないような子でもいいから、誰かもう一人は入って欲しいところだろう。でも…


「ごめん。福田くんが反対してるから…。やっぱり、作家先生自身の意向は無視出来ないよ」
「…そうッスか…」
がっくり、肩を落とす安岡くんに心の中でさらに詫びる。
(本当、ごめん…)
実は…福田くんだけでなく、僕も反対なんだ。理由は違うけど。
「とにかく頑張って。この経験はきっと、君が連載を始めた時に役に立つと思うよ」
「…!分かりました!」
「連載」の二文字に、敏感に反応する。自分に対する期待の表れだと受け取ったらしい。正直なところ、期待はそれ程してないんだけど、恩は感じてる。大して差が無いと思われる作品と彼の作品を天秤にかけるような事態になれば、彼の方を指示してあげたいって思う位には。
「じゃあ、僕はこれで。お疲れさん」
「お疲れ様ッス!」


(アシスタント、か…)
原稿が入ったアルタートケースを提げて、電車に揺られながらぼんやりと考える。福田くん自身は、「絵が下手だからそんなに要らない」と言っていたけれど…。僕は…僕の反対する、理由は…
(…惚れたら、厄介だ)
女性はなおのこと、男でも…彼に惹かれてしまう奴がいるんじゃないかって。それを懼れているんだ。


何故ならここに、生きた見本がひとり、いるから。

2009-11-15 : 雄×福SS :
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プロフィール

曜

Author:曜
バクマン。の雄二郎×福田がメインのSSブログです。福田×蒼樹も少々。ド短期運営になるかもしれませんが、よろしければお付き合いの程を。

なお、SSは話ごとに時期や設定が異なります。両思いだったり片思いだったり。キャラの性格や口調等、かなり独自解釈してたりで捏造率が高いかと思いますが、あしからずご了承願います。


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