コンビニ
出かけついでに福田は自宅最寄りのコンビニに立ち寄った。今日はジャンプの発売日。自分はとっくに読んでいる訳だけど…。
(…ちゃんと、読まれてるんだろーな?)
さすがに、立ち読みしてる人間の後ろにいちいち回りこんで、「KIYOSHI騎士」を読んでくれてるかまでは、確かめられない。そもそも立ち読みでは売り上げにもアンケートにも、影響を与えない訳だけど。とりあえず、ジャンプそのものの人気はどうだろう?と思いつつ、雑誌コーナーに行ってみると、
(お、いるいる…)
2人のサラリーマン風のスーツ姿の男が、各々ジャンプを手にしていた。
(買えよ…)
そう念じたけれど、しばらくしてお目当てを読み終えたらしい2人は、どちらもジャンプを置いて立ち去って行った。
(くっそ~!)
「…福田くん?」
「っ!?雄二郎さん?何でここに」
「何でって…。もうすぐ打ち合わせの時間じゃないか」
「…あぁ、もうそんな時間だったっけ」
「君こそ、何怖い顔してたの?」
「それは…まぁ…『市場調査』みてーなもんだよ」
「?」
最初は訳が分からなかったふうの雄二郎も、雑誌コーナーの方を見て大体の、福田の言いたいところは分かったらしい。
「きっと、今週も大丈夫だよ。アンケート」
「…本当楽観的だよな、あんた」
「お土産でも買って行こうと思って寄ったんだ。奢るよ…肉まんでいいかい?部屋で、食べよう」
「…雄二郎さん、俺こっちの…チャーシュー入ってるやつ」
「…高い方?」
目を細めて渋い表情をした雄二郎に、
「ケチケチすんなよ。…時間あるなら、すっげぇサービスしてやんのに。部屋で」
そう言いながら福田は、赤い舌先をちらりと見せた。
「……っ!」
結局、チャーシュー入り肉まんに加えて、アメリカンドッグとフライドチキン、おまけにドリンクのコーラまで、雄二郎は買ってやることになった。
「はい、雄二郎さん。これ」
福田が差し出したのは、このコンビニでの買い物の際提示すれば、ポイントの貯まるカードであった。
「…払うの、僕なんだけど?」
一応、そう言ってみたけれど、
「どうせ、雄二郎さんここのカード持ってないじゃん」
「…ちゃっかりしてるなぁ」
「打ち合わせついでに『楽しもう』って編集者のがよっぽど、ちゃっかりしてるぜ」
「……」
雄二郎はもう何も言わず、黙って札を差し出して支払った。