サイレン
ウ~ッという消防車のサイレンの音が、通り過ぎたかと思うとまた、次のが近付いてくる。複数台出動するとは、規模の大きな火事なのかと気になって蒼樹は、カーテンを引いて部屋の外を眺めた。
「近そうか?」
背中の方から、部屋の主に声をかけられて彼女は答える。
「分かりませんけど…。あ、もう一台…」
建物だけで済めば…人的な被害が無ければいいのに…と内心祈っていると、
「…今日で、よかった」
福田が呟いた。
(…「よかった」?)
火事に…人が亡くなっているかもしれない出来事に、「よかった」とは一体何事か?と思い、眉をひそめながら福田の方を振り返ると、
「…あんたが来る日で。じゃねーと俺、『まさか、蒼樹嬢の部屋じゃねーだろうな?』って心配しねーといけねーじゃん」
「…っ!」
何と言えばいいのか分からずに蒼樹が顔を赤くして黙っていると、福田はニッと笑いながら「提案」をした。
「…いっそ、心配する必要がねーようにするか?」
(それって…「一緒に暮らそう」って意味…ですか?)
相変わらず蒼樹は押し黙ったまま。しかし、言葉を交わさずとも既に、二人の間には確実に甘やかな空気が漂っていた。