朝
「雄二郎、お前福田くんの担当から外れろ。後は港浦に任せる」
編集長に、そう宣告される夢を見た。
(…嫌な夢だった…)
朝、洗面台で歯を磨きながら僕はしみじみ、思い返した。こんな夢見の悪い思いをするのは久しぶりだ。
(そりゃあ、最初の頃は…)
とにかく、礼儀ってものを知らない福田くんにイライラ、させられたけれど。でも今は…。
不意に携帯が鳴って、僕は慌ててそれをとった。
「もしもし?」
「…起きてたか?」
「福田くん!こんな早く…ってか、徹夜?」
「そう。俺はもう、寝るから…」
「…それだけ?」
声が聞けたのは嬉しいけれど。せめてもう少し、何か話して欲しい。…恋人同士なんだから。
「…雄二郎さん、あんた最近遅刻多いそうじゃん」
「…っ!誰に聞いたの?」
「いいだろ、別に。だから早く、会社行けよ。…その為に、かけたんだから」
それは…つまり…
「…僕が、寝過ごしてないか心配して、かけてきてくれたのかい?」
思わず、自分でも笑ってしまいそうな程、甘やかな声になった。だって…嬉しいから。
「…声、キモい。もう、切るから…」
自分の恋人が素直じゃないってのを重々承知してる僕は、
「ありがとう。おやすみ…愛してるよ」
「…っ!本当、キモい!」
そう言って、電話は切れた。
(そんな、キモい×2、言わなくても…)
さすがにちょっと、へコんだけれど…でもまぁ、携帯越しに顔を真っ赤にしてる福田くんが想像できたので、よしとしよう。そういえば、最初に抱き合った時も、口ではすごい、悪態の連続だったっけ。
(………)
そんなことを思い出していたら、せっかく朝勃ちもおさまってた下半身が、再びエラいことになってきてしまった。
(…まだ、時間あるよな?)
早く起きたおかげで、抜く時間位はありそうだ。僕は、トイレに駆け込んでジッパーを下げた。